牛隆佑(うし りゅうすけ)さんの短歌

あきらめることがそんなにわるいのかそのへんどうよ麻婆豆腐
(牛隆佑/ブログ「消燈グレゴリー その三」より)

Web投稿短歌の世界で、常連入選者としてその名をとどろかせる牛隆佑さん。
わたくし西村湯呑、実はかねてより、超がつくほどこの方のファンであります。
それはもう、「うしらば」というサイトを作って牛さんの歌ばっかり紹介したいぐらい好き(^^; 常に真摯で、でもユーモアを忘れず、甘くないけど希望のある牛さん短歌ワールドを、当サイトで紹介できて幸せです(^-^)
掲載歌も、大好きな歌の一つ。この文脈で麻婆豆腐が出てくる発想がすごいです。麻婆豆腐も「えっ!?(周囲をキョロキョロして)おっ俺?」とうろたえることでしょう。麻婆豆腐に目、ないけど。
でもそれでいて、こういう答えの出ない問いは、麻婆豆腐ぐらい意外なヤツに聞かなきゃいけないような、不思議な納得感があります。麻婆豆腐だけに辛辣な回答をしてくれるかもしれません。麻婆豆腐に口、ないけど。

八十回勝つため六十回敗ける広島カープみたいに俺も
(牛隆佑/ブログ「消燈グレゴリー その三」より)

全俺の中で絶賛の嵐の牛隆佑さんの歌、第2弾。
プロ野球全然詳しくない湯呑さんですが(おい)、そんな私でも知ってる、広島カープの「真面目な頑張り屋さん」のイメージを上手くいかしたポジティブ短歌と思います。
弱小はハナから承知、良い意味で開き直って、一戦一戦しっかり戦いながらも負けは必要以上に苦にせず、明日の勝ちに向けてまた頑張る。そういう、常勝軍団とはまた別の強さが、ファンを魅了するのでしょうね。
(ちなみに、調べたところでは八十回勝ったらだいたいリーグ優勝できるみたいです。あえて分かりにくいかたちで、「一進一退の末、最後に勝つ」ことを暗示しているのだとしたら、深いなあ…)
あえて結論を書かずに、「俺も」で終わるところもいいなーと思いました。「今日から俺は!!」みたいでスキ(^^;

何回も諦めかけたしあわせを逃げ水と知りなお追いかける
(牛隆佑/題詠blog2011より)

う、牛のアニキ、カッコエエ…(* ゜д゜*)
全国53万人(推定)のうしりゅーファンが泣いた、ずっこいぐらいにかっこいい歌です(^^;

「ずっとつかめないしあわせを追うなんて…」と、思わないでもない。
でも、ここでいう「しあわせ」は、書くことで身を立てたいとか、A川賞とかN木賞がとれる名作を書きたいとか、ペンは剣より強しを実践したいとか、そういう少年の頃のキラキラした想い、夢のことだと思います。
(あ、牛さんじゃなくて某Y・Nさんの中二病全盛期の頃の話です念のため^^;)
今はもちろん、それがどれだけ大それたことか、手の届かないものか分かってる。でも、心の隅っこにはキラキラのキぐらい残して、まずは新人賞応募してみよか、ぐらいの冒険心をいつだって持ち続けたい(まだそれもできてないけど…)。続けていればきっと、描いていたものとは違っても、いつかどこかの地平にたどり着ける。そんなふうに勇気づけられる歌でした。

何のジャンルに生きる人でも、夢を実現してなくたって、キラキラのかけらが残ってる人は輝いてみえます。短歌な人々の中には、キラかキラキぐらいまでいっちゃってるすごい人もいて、そんな人と普通に会えちゃったりすることに驚きつつ、とても楽しいこの頃です。

【今後紹介予定のお気に入り短歌:牛隆佑さん】
思い知れ、お前は一人、一人なのだ、一人だ、一人、しかいないのだ
(牛隆佑/第一回天下一短歌会予選ラウンド提出歌)
ちっぽけな幸せだったら要りませんごめんやっぱりやっぱり下さい
(牛隆佑/ブログ「消燈グレゴリー その三」より)
幸せに僕がなってもいいのですずっと忘れていたことですが
(牛隆佑/ブログ「消燈グレゴリー その三」より)
朝九時に花屋は開き僕じゃない誰かの物語が始まる
(牛隆佑/「歌会たかまがはら」 お題「花・植物」採用歌)
花束を受け取る時のぎこちない感じが好きだ(たとえば君の)
(牛隆佑/「歌会たかまがはら」 お題「花・植物」採用歌)
どの家にも花瓶があると信じているあなたはとてもとてもいい人
(牛隆佑/「歌会たかまがはら」 お題「花・植物」採用歌)
ここで声を上げないものは無条件降伏の無に飲み込まれろよ
(牛隆佑/短歌誌「うたつかい」2013年2月号より)

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