流川透明(るかわ とうめい)さんの短歌

題詠blog2012より:流川透明さんの短歌】
お題「秋」
秋までは待とうと言ったあの人に秋が来なくなって七年
お題「企」
事務的に婚姻届けを差し出せばいい企画ねと判を押される
お題「的」
抱きしめるその腕さえも刹那的未来信じぬ愛もまた愛
(流川透明/ブログ「秘密基地は雲の中」より)

題詠blog2012で出会った歌の達人の一人、流川透明さん。
この方は詩人さんなのですが、なんというか、歌のストーリー仕立てがすごく上手くて、 どの歌も前後の物語をあれこれと想像してしまいます。こういう歌に目がない私は、流川さんの題詠に秘孔を突かれまくりでした。

お題「秋」:一図に待ち続ける切なさが見事に表現されています。どうか、あの人に秋が来ますように。
お題「企」:こういう素直じゃないカップル、大好きです。末永くお幸せになりやがれ。
お題「的」:「未来信じぬ愛もまた愛」!!「未来信じぬ愛もまた愛」!!!←フレーズが好き過ぎてぶっ壊れた

どの歌からも一本の小説が書けそうな、すばらしいストーリーテラーだと思います。

題詠blog2012より:流川透明さんの短歌 その2】
お題「チャンス」
放課後は毎日二人あったのにチャンスはいくらでもあったのに
お題「犀」
公園の金木犀が薫る頃思い出すのはあの日の喧嘩
お題「蹴」
蹴り上げた缶どこまでも美しく隠れる事も忘れてしまう
(流川透明/ブログ「秘密基地は雲の中」より)

ふたたび、流川透明さん。今回は切なくなる歌三首。
多くの読者が「その気持ち、わかるわかる」と共感してしまう、確かな題材の選択眼に嫉妬してしまいます。

お題「チャンス」
毎日「明日があるさ」と言い訳しながら、いつのまにやら卒業式。学生の皆様、ノーモア西村。

お題「犀」
何かをきっかけに呼びさまされる過去、という歌はよくありますが、金木犀の甘ったるくもどこか切ない薫りが、書かれていない別れまでも想起させる秀歌です。

お題「蹴」
子どもの頃、誰もが一度は遊んだ「缶蹴り」。真っ青な空に吸い込まれていく缶に、急いで隠れなければならないはずのみんなも、そして缶を追いかけるべきオニまでも、ただボーゼンと見入ってしまっている。ルールとか、敵とか味方とか、 そんなものがすっとんでしまう圧倒的な美しさが、あの頃にはそこここにありました。

というわけで、流川さんの歌の魅力の、ほんの一端を紹介させて頂きました。他にも、ちびりそうにホラーな歌や、「惚れてまうやろ〜」なドキッとする恋歌まで、流川さんの百首には一首一首に物語があります。どうか次回題詠blogでも、 たくさんの物語を紡いで下さい!

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