虫武一俊(むしたけ かずとし)さんの短歌

笹の葉にじかに願いを書いちゃってあの日ぼくらは最強だった
(虫武一俊/「うたらば」フリーペーパー vol.1「はつなつ」より)

七夕といえばむしたけさんのこの歌。
うら若き短歌女子じゃなく熱烈おっさんふぁぼで、むしたけさんごめんなさい。

この「書いちゃって」のなんちゃって感とかね、「最強」の小学生感とかね、部分部分はコミカルで、そしてそれゆえに、ノスタルジーが怒涛のつっぱりのように押し寄せてくる。
うん、最強だったね。海パン一丁の彦星が、天の川ビッグウェーブにノリノリの時代だったね。願えば叶うって、微塵の疑いもなかった、あの頃。

もう今は、たとえ笹や短冊があっても、恥ずかしくて願いが書けないちっこい大人になってしまいました。
あ、でも、ふと思ったんですが、そういえば私、短歌のかたちで、七夕の短冊に書くようなことをいっぱい書いてるかも。いやこれボクの願いじゃなくて作中主体さんの願いですよ、だから恥ずかしくないですよ。へっへーん。みたいな(^^; 気がつけば毎日七夕の湯呑さんでした。

【今後紹介予定のお気に入り短歌:虫武一俊さん】
「生きろ」より「死ぬな」のほうがおれらしくすこし厚着をして冬へ行く
(虫武一俊/「うたらば」ブログパーツ短歌 お題「生」採用歌)
宇宙的スパンで見れば風呂のあとまたすぐ風呂の生物だろう
(虫武一俊/「うたらば」ブログパーツ短歌 お題「生」採用歌)
マイ鉄塔を決めなさいって先生に強要されていくまっすぐさ
(虫武一俊/「うたらば」ブログパーツ短歌 お題「強」採用歌)
新しい石けんに古い石けんをくっつける なにが忘れましょうだ
(虫武一俊/ブログ「The NEET Verse」より)
夕ばえにだけうまくいく作戦があると聞かせて握る手のひら
(虫武一俊/「うたらば」フリーペーパー vol.1「夕刻」採用歌)
始めたら終わる世界で夕立は優等生の激しさを持つ
(虫武一俊/「短歌男子」より)
乗せたまま投げたのだからうつくしいあきらめとして匙をこぼれろ
(虫武一俊/「短歌男子」より)
生きていくことをあなたに見せるときちょうど花びらでも降ればいい
(虫武一俊/短歌誌「うたつかい」2013年4月号より)

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