2013年1月の過去ログ

◇2013.01.02◇

一つずつ叶えていける年であれ きゃりーぱみゅぱみゅ噛まず言うとか
(西村湯呑)

新年明けましておめでとうございます。今年もこんな感じでいきたいと思います。どんな感じや。

今年は、身の程知らずにも、色々なところに拙作を投稿していこうと思います。で、採用されるにせよボツるにせよ、発表があってから、作品をこのサイトで紹介しようと思います。ボツった場合も没歌をサラシモノにして、何がダメだったか自虐的に検証します。とってもポジティブなサイトです。
以前は更新の2回に1回は自作短歌を載せていましたが、上記の場合そうもいかなくなるので、自作短歌は不定期掲載として、基本的にあこがれ歌人さんの短歌レビューサイトにしようと考えています。
既に年末の題詠blog歌の達人シリーズを始めてから、自作短歌を載せなくなって、今回久々なのですが、特に誰も何もツッコまなかったので、まあいいかと(泣)。ただ題詠blogの歌は、でき次第掲載するつもりです。嫌がらんと読んで下さい(^^;

良い歌をたくさん読み、たくさん詠める一年でありますように。
本年もよろしくお願い致します。

◇2013.01.04◇

「とんちんかん」と書かれたページで子は笑う必ず笑う「とんちんかん」で
(俵万智/「プーさんの鼻」より)

小さな子のかわいらしさ全開の歌。意味は分からなくても「とんちんかん」の響きがツボだったんでしょうね。
正月に会ったわが甥っ子(3)も、どこでおぼえたのか「それで結構クソけっこー」というたいへんお上品なフレーズがお気に入りで、回らない舌で延々そればっかりでした。
掲載歌、よく見ると前半五七五が全体的に字余りなのですが、かえってそれでリズムよくコミカルに読めるように思います。そこらへんやっぱりすごい俵万智さん。

◇2013.01.06◇

うたらばブログパーツ短歌 お題「生」 落選!】
こんなことあるんだ生きててよかったと思ったあたりで目覚ましが鳴る
婚活をやめて「生活」しようよって 一瞬意味が分からなかった
理由なんてどうでもいいよ生きていてほしかったんだ大馬鹿野郎
(西村湯呑)

うたらば」という有名な短歌サイトがあります。うちのサイトの100光年ぐらい先を走っておられる、スタイリッシュでクリエイティブでカッチョイイ短歌サイトです。うたらばでは常にお題を出して投稿短歌を募集しておられ、毎回300〜500首も集まる盛況ぶり。そこで!不肖私も、昨年末のお題「生」に投稿してみました!
…結果!見事落選!3首出して3首とも!ハッハ〜!世の中そんなに甘ないでぇ〜!(by妻)

短歌…やめよっかな…( ゜д゜)  ←めっちゃ打たれ弱い

うそですやめませんやらせて下さい。
えっと。改めて読むと、どれもありがちというかベタですよね。
そして、ベタゆえに安直な表現になって、おかげでベタなのにリアリティが無い。
あと2首目、シチュエーション分かりにくい。プロポーズの歌のつもりでした。
3首目、突然シリアスすぎ。何かの連作の中だったらまだ分かるけど。

…今だから反省してるけど、投稿した時は自信作でした。オレ最高とか思ってた。死にたい。
採用された方々の歌を読んで、やっぱすごいって思いました。落ちて当然。顔洗って出直します。
そして、うたらば主宰者にして選者である田中ましろさんの選歌眼に、心より敬意を表します。うたらばすげー。
また懲りずに、うたらばも、それ以外も投稿します。今回はお目汚しでごめんなさいでした!

◇2013.01.08◇

つきあたりを曲がって上に出てみれば焼野原かもしれないけれど
(東直子/「十階」より)

人をくったような感じの歌ではありますが、なんか好きです。
われわれ関西人にありがちですが、「○○って××やと思うんよね。知らんけど」っていう人いますよね。
知らんのやったら言うなー!!と周囲からツッコまれるハメになるわけですが、でも個人的には、知らなくても何か言わずにはおれないおせっかい焼きも、あったかくっていいなと思います。
掲載歌も、例えば人生の岐路に迷う少年に、めちゃくちゃなアドバイスをする世話焼きおばさんみたいな。
「アンタの人生なんか知らないよ。自分で決めな」が正しい対応かもしれないけど、そうじゃなくて、答えのない問いだからこそ、チャチャを入れてくれるだけでもずいぶんと心強いものですよね。
「焼野原ってなんやねん!もうええわ!」とツッコみながら、少年は笑顔で歩き出すのでした。

◇2013.01.10◇

「芸をしない熊にもあげる」と手の甲に静かに乗せられた角砂糖
(穂村弘/「シンジケート」より)

「穂村さんの彼女の一言シリーズ」その4。 これまで
これもおそらく、売れなくて貧乏暮らしをしている作家のタマゴと、明るくポジティブに彼を支えてくれる彼女…というシチュエーションだと思います。
ちなみに穂村さん自身は、会社勤めしながら執筆業もする二足のワラジ生活を経て、売れてから専業作家に転身されたので、ご自身の経験ではないはず(←何気に穂村フリークな湯呑さん)。でもこの歌の他にも「安アパートに同棲する二人」みたいな歌を多く詠まれているので、きっと穂村さんこういう「神田川」っぽい設定が好きなんだろうな(^^; 私も好きです。
なかなか芽が出ない彼を「芸をしない熊」と揶揄しながらも、気分転換のお茶に誘う、優しい彼女。穂村さんの歌は、どん底にありながらもどこか希望があって、温かい気持ちにさせてくれます。

◇2013.01.12◇

嘘でしたでも愛でした始まりのなかった嘘に終わりはあって
(枡野浩一編/「もう頬づえをついてもいいですか?」より)

たまにはポジティブの看板を裏返して、こういう歌も。(いつものような気もしますが…)
枡野さんの、こういう深いところをえぐってくる歌、好きだけどめっちゃコメントしづらい。でも好き。
結局果たされなかった二人の約束。でも、本気でそれを目指した時期が確かにあった。初めから嘘だった場合と「結果」は変わらないかもしれないけど、でも、その嘘とこの嘘は全然違うものだと思います。
ここまで書いて、ああ、枡野さんのあの歌はこういう意味だったのか、と一人納得しました。

結果より過程が大事「カルピス」と「冷めてしまったホットカルピス」 (枡野浩一/「てのりくじら」より)

「だからなんやねん」と思いながらも、何となく心に残っていた歌がここでつながりました。
まったく印象の違う歌でありながら、意味するところは一緒。枡野さんのブレない太い芯が感じられます。

◇2013.01.14◇

同じ事を二回言うかもしれませんどうぞよろしくお願いします
ひと目惚れ以外したことありませんどうぞよろしくお願いします
(中川愛/枡野浩一編「どうぞよろしくお願いします」より)

枡野浩一さんが企画・編集された投稿歌集「どうぞよろしくお願いします」は、あらかじめ決まった下の句(七七)に投稿者が様々な上の句(五七五)をつける、「付け句」という遊び企画から生まれた本です。
ご覧の通り、この本における歌の付け句は「どうぞよろしくお願いします」。本に収められた歌はすべて、下の句が「どうぞよろしくお願いします」になっていて、様々な上の句が、投稿者の腕の見せどころになっています。
面白い歌が山盛りの本でしたが、とりわけこの中川愛さんの二首がほのぼのしてて好きです。
「こちらこそよろしくお願いします」って言いたくなっちゃう。って何をだ。

◇2013.01.16◇

あきらめることがそんなにわるいのかそのへんどうよ麻婆豆腐
(牛隆佑/ブログ「消燈グレゴリー その三」より)

Web投稿短歌の世界で、常連入選者としてその名をとどろかせる牛隆佑(うし りゅうすけ)さん。
わたくし西村湯呑、実はかねてより、超がつくほどこの方のファンであります。
それはもう、「うしらば」というサイトを作って牛さんの歌ばっかり紹介したいぐらい好き(^^; 常に真摯で、でもユーモアを忘れず、甘くないけど希望のある牛さん短歌ワールドを、当サイトで紹介できて幸せです(^-^)
掲載歌も、大好きな歌の一つ。この文脈で麻婆豆腐が出てくる発想がすごいです。麻婆豆腐も「えっ!?(周囲をキョロキョロして)おっ俺?」とうろたえることでしょう。麻婆豆腐に目、ないけど。
でもそれでいて、こういう答えの出ない問いは、麻婆豆腐ぐらい意外なヤツに聞かなきゃいけないような、不思議な納得感があります。麻婆豆腐だけに辛辣な回答をしてくれるかもしれません。麻婆豆腐に口、ないけど。

◇2013.01.18◇

酔ったふりして君の名で歌います「一休さん」のテーマソングを
(西村湯呑)

知る人ぞ知るインターネット番組「歌会たかまがはら」。毎回お題を出して短歌を募り、優秀作品を紹介していく投稿番組で、動画共有サービス「Ustream」を利用してネット上に公開され、いつでも誰でも視聴できます。

その「歌会たかまがはら」の1月13日のお題「歌」の回で、放送外ではありましたが、上記自作が「発表できなかったけど気になった歌」として、同番組のブログに掲載されました!
しかも選んで下さったのが「うたらば」の田中ましろさん! バンジャー\(´∀`)/ーィ!!

えっと、歌はまったくもって読んで頂いた通りの内容なのでほっといて。もう少し「歌会たかまがはら」の説明を。
この番組は天鈿女聖さん(「あめのうずめのひじり」さん、通称うずめさん)という歌人さんが超人的な努力で制作されており、うずめさんとゲスト歌人さん(今回は田中ましろさんでした)がトークしながら投稿短歌を紹介していく、ユルい雰囲気が楽しい番組です。全国の投稿歌人をつなぐ交流の場としても、 素晴らしい試みだと思います。個人で映像番組が作れるなんて、いやー世の中すすんどるのぅ。ずずー。(番茶)

掲載歌、さいわい田中ましろさんは分かって下さったようですが、ある程度世代を選ぶネタかも?分からない人ごめんなさい。分かってくれた人ありがとう。「母上様…」とボケてくれた人、もっとありがとう。

◇2013.01.20◇

銀河まで宅配便が行けばいいお前の好きな柿が熟れたよ
(米津説男/第五回「あなたを想う恋のうた」秀作)

大昔(たぶん7年ぐらい前)に新聞で読んで以来、ずっとおぼえていた歌。亡くなった妻(あるいは夭折した子ども?)を想う、切ない挽歌です。
作者名をおぼえていなかったのですが、ネットで検索した結果、この米津説男さん(俳人さんのようです)の作品と思われます。その後「警察署長」(たかもちげん・やぶうちゆうき)という漫画と、漫画原作のTVドラマでも使われ、有名になったようです。(詳しい経緯は分かりません…もし違っていたら教えて下さい!)
年老いてからも、こんなきれいな歌が詠めるといいなあ…としみじみ思います。

◇2013.01.22◇

心知らぬ人は何とも言はば言へ 身をも惜しまじ名をも惜しまじ
(明智光秀の辞世の歌)

突然400年以上前の人の歌をひっぱり出してきてすいません。あるあるのうた史上最古ですね。
でも、昔の人の歌でありながら、武士らしく(?)意味は明快で、何の飾りもない魂の叫びって感じが好きです。
これは明智光秀が「本能寺の変」で主君信長を討った後、秀吉との戦いに敗れて敗走、残党狩りに見つかって殺される時に詠んだ歌とされています。
一般に、裏切者として嫌われているこの方ですが、どうもこの歌を読む限りでは、個人的な遺恨とか、天下を取りたいとかの欲得じゃなく、何かもっと別の命を懸けるべき理由があったんじゃないかな…と思ってしまいます。
ここは歴史サイトではないので、彼の真意や「本能寺の変」の是非を問うものではないのですが、「心から叫んだ歌は、技巧や才能を超える力を持つことがある」と思った一例として挙げさせて頂きました。
なお、この歌は「黎明に叛くもの」(宇月原晴明)という小説で知りました。オススメの伝奇小説です。

◇2013.01.24◇

ほしいのは勇気たとえば金色のおりがみ折ってしまえる勇気
(天野慶/天野慶・天道なお・脇川飛鳥「テノヒラタンカ」より)

うーんわかる。子どもの頃、折り紙の袋の中の金色と銀色って、なんかプレミア感があって最後まで残してました。共有のものならなおさら、自分ごときが折っちゃいけないと思って残してたなぁ。
でも、今や講演もバリバリこなされる天野慶さんも、かつては同じ思いをしていたことがあったんだ、と思うと、なんだかほっとします。
世の中にはいきなり金から折り出す豪傑(?)もいるかもしれませんが、大多数は、「折れない人」であったのが勇気をふりしぼって「折れる人」になるわけで、そのプロセスを経た人にも、まだこれからの人にも、共感と力を与えてくれる素敵な歌だと思います。

◇2013.01.26◇

降りしきる雪のさなかで抱きしめたものがいちばん大切なもの
(西村湯呑)

またダンサーUME2 BRAND-NEW*さんの舞台を観にいってきました。
今回の「フユノオトシゴ」は、世界中を冬にしてしまう強い魔力を持って生まれてきた子と、その子を命がけで守る母、そして二人取り巻く人々の物語。たとえ自分を含む世界全てが滅ぼうとも、全力でわが子を守る母親と、そんな母子を救うために、自分の命を削って魔法を使う魔術師。 冬の寒々とした風景の中の物語なのに、終始あたたかい気持ちにさせられた、素晴らしい舞台でした。

UME2さんとは全然関係ない話ですが、ここんとこわたくし湯呑は、とある活動に参画しようかしまいかずっと迷っていました。めっちゃやりたいんだけど、どんくさいのに超凝り性というイケテナイ人間なので、今も仕事でアップアップなのに、新しいこと始めたらきっとソッコーでヒューズがとんじゃう。 でもやりたい…ぐるぐるぐる。
けれどUME2さんの舞台を観て、やっぱり今はやめよう、しばらくは、既に手掛けていることをしっかりやろう。と決心しました。

どんな人も、ちっぽけな手で抱きしめてあたためられるものはほんのわずかで、その手を広げてしまったら、一番大事なものまで落ちてしまう。雪とか冬とか寒くて嫌だけど、そういう厳しい状況の中でこそ、自分にとって何が大切かが分かることもあるなあ…という思いで、掲載歌を作りました。UME2さんほんとにありがとう。
何をしようとしてたかはナイショと致します。今はあきらめるけど、いつかできるように頑張るのだ(^-^)

◇2013.01.28◇

八十回勝つため六十回敗ける広島カープみたいに俺も
(牛隆佑/ブログ「消燈グレゴリー その三」より)

全俺の中で絶賛の嵐の牛隆佑さんの歌、第2弾。
プロ野球全然詳しくない湯呑さんですが(おい)、そんな私でも知ってる、広島カープの「真面目な頑張り屋さん」のイメージを上手くいかしたポジティブ短歌と思います。
弱小はハナから承知、良い意味で開き直って、一戦一戦しっかり戦いながらも負けは必要以上に苦にせず、明日の勝ちに向けてまた頑張る。そういう、常勝軍団とはまた別の強さが、ファンを魅了するのでしょうね。
(ちなみに、調べたところでは八十回勝ったらだいたいリーグ優勝できるみたいです。あえて分かりにくいかたちで、「一進一退の末、最後に勝つ」ことを暗示しているのだとしたら、深いなあ…)
あえて結論を書かずに、「俺も」で終わるところもいいなーと思いました。「今日から俺は!!」みたいでスキ(^^;

◇2013.01.30◇

団栗はまあるい実だよ樫の実は帽子があるよ大事なことだよ
(小島ゆかり/「月光公園」より)

大事なことだよ!!(←またフレーズが好きすぎてちょっと壊れてます)
…おそらく小さな子が言ったことをそのまま短歌にしたものと思われますが、「大事なことだよ」にすっかりやられました。男の子か女の子かも分からないけど、かわいくて萌え死にそう。たぶん日頃から「信号が赤の時は止まるの。大事なことだよ」とか親に言われていて、それを大真面目に真似ているのでしょうね。
大人にとっては茶色い木の実はみんな団栗(どんぐり)でも、この子にとっては団栗(クヌギの実のことと思われます)と樫の実はまったく別のもの。その違いは信号の赤と青ぐらい、大事な大事なことなのです。