部位フォト短歌シリーズ

◇2014.4.27◇

【骨・骨格フォト短歌集「ほねたん。」より3首!】
鎖骨より崩れゆくことゆくりなく空のふりした階段のぼる
(いないずみ。)
こんなにも肋が折れているなんて送ったけれど気にはするなよ
(風橋平)
あぁ君はおとこだったね 骨張って汗ばむ躰われに寄り添う
(月下桜)

最強デザイナーこはぎさんが、色々な人の色々な嗜好を開眼させまくっている「部位フォト短歌」シリーズ。
その第3弾、「骨・骨格フォト短歌集『ほねたん。』」が出ました。
今回のテーマは「骨」。骨のイメージ短歌というと、ホラーな歌が集まるかと思いきやそうではなく、なんでか性愛系の歌が多い多い。死から生を想起するのでしょうか。それとも単にみんなエ(ry
そんなわけで、よい子のサイト「あるあるのうた」にはギリギリな、大きいお友だち向けのご本ではありますが、どのような志向であれ歌に真剣に取り組んでいれば良い!という信念のもと、ムッツリ西日本代表なりに頑張って「ほねたん。」のお歌を紹介します!

鎖骨より崩れゆくことゆくりなく空のふりした階段のぼる (いないずみ。)

エロいですねー(ミもフタもない評)。
でもその種のワードを「鎖骨」以外一切使わないことで、かえって官能を匂い立たせるという技法はさすがの熟練者です。秘すれば花ですね。チラリズムですね。湯呑さんは何を言ってるんでしょうね。
「ゆくりなく」は「思いがけなく、突然に」の意味。そんなのみんな知ってるよね!今ググった 「突然に」とかでも字数は合いますが、雅語的な表現が一首の雰囲気をより押し上げます。
そして「空のふりした」がいいですね。空にのぼる、のぼりつめる、すなわち絶頂というのは分かりやすい比喩ですが、そこにもう一つ、「空(くう)、むなしい」というニュアンスが入ってくる。つまり唐突に始まったこの関係が、いずれあまりよくない結末を迎えるであろうことを、もう察している。でも抱かれる。
刹那的な恋愛の熱と虚ろさ、分かっていても止められない想い。深ーいオトナな一首です。

こんなにも肋が折れているなんて送ったけれど気にはするなよ (風橋平)

じゃあ送んなよ!!とツッコむ人は強い人。そんな人は短歌なんかしないんだろうな。男の弱さと強がりがうまく表現されています。わかるわー。あばら折ったことないけどわかるわー。
イメージ写真が携帯で自分の胸の写真を撮っているものだったので、つまりメールで誰かに送るという想定なのでしょうが、歌だけ取り出して読むと、戦場で手紙を書いている兵士のようにも思えます。
痛みそのものは耐え難いほどじゃない。いつかは治りもするだろう。でも怪我をしたことで、ふっと死を想ってさみしくなった。そんな時、自分のことを案じてくれる誰かがいると思うと、矢も楯もたまらなくなってその人に連絡をとってしまう…。死ぬことよりも、誰の記憶にも残らないことがいちばん怖いんですよね。
エロエロの歌群の中に、ふっとこういうのがあると余計に響きます。

あぁ君はおとこだったね 骨張って汗ばむ躰われに寄り添う (月下桜)

草食系を絵に描いたような彼氏。おつき合いを始めてもずーっと友達みたいで異性を感じさせなかった。でも服を脱いだ時、明らかな骨格の違いにはっとした。同時に、自分たちが恋人同士であることを今さら認識して、急に彼のことがたまらなく愛おしくなった。
…とまあ、物語がするする出てくる優れた一首だと思います。おそらく女友達がたくさんいて、わりあい社交的な彼。その彼が人知れず抱える孤独を垣間見てしまった。そういう含みまで、直接的には書かれていないけれど伝わってきます。
「おとこ」「躰」の字の工夫がすばらしいですね。これが「男」だったら全然だめです。「あぁ君は男だったね」今ごろ何ゆうとんねーん!です。「躰」は「体」であってもそこまで悪くないけど、でも「躰」の方が小柄な体つき、あるいは一個の生き物としての小ささみたいなものが表わされて、断然イイ。
イメージ写真も男性の体ではなく「冷えたグラス」。(たぶん行為の後に水を飲みに行った彼の体を後ろから見ている、ということでしょう)全体的な構成が秀逸です。

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ちなみに私は、「尺骨茎状突起」(手首のポコッと出た骨のこと)を詠みました。私は「手るぶし」と呼んでいますが、ググると「トッキ―」「ポコリーヌちゃん」などいい感じにアホな名前がたくさん出てきて面白かったです。
しかし「ほねたん。」内では、かの中牧正太さんとネタがかぶってしまったこと、そして中牧さんの尺骨茎状突起が雄々しすぎてもうその車で轢いて下さいと思ったことをここにご報告します。

もうさすがにネタがなくなってきたような気がする「部位フォト短歌シリーズ」。しかし一方で、こはぎさんならまた新たな萌えを開拓しそうな気もします。次号がどうか、発禁になりませんように。

◇2014.1.29◇

【眼鏡フォト短歌集「めがたん。」より3首!】
ねえお兄 あの春かけた眼鏡ほど遠くまで見えるものはなかった。
(河嶌レイ)
寝起きだけかける眼鏡がいとしくてうしろから抱く真冬日の朝
(香村かな)
焦点の合わない恋はもうしない 度数が合った今を見てゆく
(嵯野みどりは)

短歌界が誇る三倍速デザイナー・こはぎさんが、昨年末から強力に展開している「部位フォト短歌集企画」。
その第二弾、「眼鏡フォト短歌集『めがたん。』」が早くも完成・公開されました。眼鏡をかけてないわたくし湯呑も、短歌だけでちゃっかり参加させてもらってます。
(しかもタイトル『めがたん。』はなんと拙案が採用されたもの。こはぎ大明神ありがとうございます ≧∀≦)

第一弾の「手・指フォト短歌集『てとてとたんか』も良い歌たくさんでしたが、今回はまた一段と、フォトジェニックかつフェチ度秀歌度の高い投稿歌集となっています。ツイッター短歌クラスタのこういうノリ、好きだなあ(^-^) 三首、ピックアップさせて頂きました。

ねえお兄 あの春かけた眼鏡ほど遠くまで見えるものはなかった。 (河嶌レイ)

すいません、「お兄」に選歌力をぜんぶもっていかれました…お兄…。(未知のツボを押された湯呑さん)
世界をぐんと広げてくれた、憧れの存在「お兄」。今はもう、お兄と同じ大人になってしまった自分だけど、あの感動は忘れない。今では誰かと結婚してパパになってるお兄だけど、私は、今でも、ずっと。(誰か止めて)

寝起きだけかける眼鏡がいとしくてうしろから抱く真冬日の朝 (香村かな)

今回、恋愛というか色っぽい歌が多くて、眼鏡ってそういう連想アイテムなんだー、と、非メガネとしては面白かったです。(今ごろ企画趣旨を理解してる人)
香村さんのこの歌は、恋愛歌の中でもなんか真面目で(ゴメンナサイ^^;)良かったです。真冬日の朝にもいそいそ起き出して身支度をする律儀な恋人。寝起きのふにゃふにゃの顔が、眼鏡でびっと引き締まる。そんな恋人を抱きしめたくて、自分も起き出す。
比較的ひねりがなくストレートな歌ですが、そこが生真面目なカップルを表しているようで、かえっていいなーと思いました。うん、俺もダテめがね買おう。(台無し)

焦点の合わない恋はもうしない 度数が合った今を見てゆく (嵯野みどりは)

比喩がきれいにはまっていて、これは本当に眼鏡屋さんのキャッチコピーに使えそうな。一字空けは必要上もあるでしょうが、その空白に、色々あった過去から現在に至るまでの時間や、決意の深さが感じられて素敵でした。あとみどりはさんといえば、序文がすごくよかった!扉にふさわしい言葉だったと思います(^-^)

というわけで、短歌好きにも部位好きにもたまらない、両方好きな人は悶絶ものの、こはぎさんの部位フォト短歌シリーズ、今後も期待です!

…ところで、こはぎさんや中牧さんは、どちらのモデル事務所に所属されているのでしょうか??