MORNINGCALL GIRL

◇2014.5.11◇

【「MORNINGCALL GIRL」(by ななみーぬさん)より3首!】
永遠のような顔して笑うなら今すぐさっさと死んでしまえよ
「いい子だね」と頭を撫でられるたびこころのうらにつけられるきず
何度でも生まれ変わって生きていく 忘れたことも忘れてしまう
(ななみーぬ/MORNINGCALL GIRL)

2013年秋、紀伊國屋書店グランフロント大阪店で行われた「短歌フェア」にフリーペーパーとして出品された「MORNINGCALL GIRL」。作者はななみーぬさん。
カラー刷りでめっちゃかっこいいイラストの表紙、爽やかで鼻血の出そうなセンスのいいタイトルに、「このクオリティでフリーペーパー!?」「作者は大学生!このイラストも自分で描いてるだと!?」「才能の宝石箱や〜」「まいうー」等々、当時の話題をさらいました。後半すいません。
そんなブームに乗り遅れること半年、今ではすっかり他のことでも有名になっているななみーぬさんをまぶしく見つつこのミニ歌集の紹介をさせて頂きます。ぼくのことMr.オクレと呼んで下さい。

永遠のような顔して笑うなら今すぐさっさと死んでしまえよ

ロックですね。(超テキトーな評)
一見罵倒のようですが、「お前もっと自分のしあわせのために生きろよ!!!」という強烈な鼓舞の歌だと思います。他人のために自分のことを何もかも後回しにして仏様のように笑ってる人、いますよね。
言ってる人も言われた人もいい人。字面とまったく逆のあたたかさが感じられる面白い歌です。

「いい子だね」と頭を撫でられるたびこころのうらにつけられるきず

何だか妙に印象に残る歌でした。作用反作用の法則みたいな。
褒められてうれしい反面、何か大事なものを失ってしまったような後悔がある。そんな複雑な気持ち。
たとえば世の長男長女の方々は、「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と色々なものを我慢させられ、それで「いい子だ」と頭を撫でられてきたと思います。でも本当は、思い切り甘えたい時もあった。そういうことの積み重ねで人格が形成されて、しっかりした物わかりのよい大人になって、それはそれで良かったと思う。でもいつも時々考える。自分が違った環境に育っていたら、弟妹のように甘え上手になっていたら…。
自分が捨ててきた、もう取り戻せないものへの悔い。「こころのうら」という表現が絶妙です。
以上、生まれてこのかたずーっと弟だった湯呑がお送りしました。甘え上手かどうかは知らん。

何度でも生まれ変わって生きていく 忘れたことも忘れてしまう

これも深いですね。上の二首もそうですが、本当に大学生ですかあなた。どこで悟ったのよそういうの。
人生において必ず大なり小なりある、どうしようもない理不尽を受けた時の克服方法。「忘れたことも忘れてしまう」がすばらしいです。
かつて歌人・枡野浩一さんが、「最大の復讐は『あなたが幸福に過ごすこと』です」(「枡野浩一のbot」より)と言っておられ、うぉぉぉと感動したのですが、この歌もまた別の側面から同じ解にたどり着いているように思います。人生において何があったんだななみーぬさん。「大なり小なり」と打つと(≧∀≦)が出てくる脳みそお花畑のおっちゃんにその悟りを伝授して下さい。

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ななみーぬさんは現在、大学短歌会に入って短歌の腕をますます磨きながら、そのキレッキレのデザインセンスを会の宣伝に活かして、新入生勧誘に絶大な貢献を果たしています。 田中ましろさんやこはぎさんや嵯野みどりはさんのような、短歌力とデザイン力を併せ持つ稀有な人材のタマゴがここに。きっと社会人になったら短歌界隈で争奪戦必至。でもどこへいこうとも、その伸びやかな作風を維持してほしいです。あと短歌歴あんまり変わんないのに先輩面する湯呑さんをゆるしてほしいです。